土星の環と羊飼い衛星「ダフニス」の写真~カッシーニの奇跡

2020年6月5日

  土星の環と羊飼い衛星ダフニス(Daphnis) NASA公式サイトより引用
  土星の環と羊飼い衛星ダフニス(Daphnis) NASA公式サイトより引用

土星の環の名前と順番

この写真はNASAの惑星探査機・カッシーニが撮影した写真で、つい先日公開されたものです。撮影日は2017年1月16日。すごいですよね、これ。土星の環ですよ、環・・・・。高校生の頃、天体望遠鏡で小~さな土星の環を見ていましたが、この写真は本当に自分が環のそばに居るように感じます。

土星の環は、大まかにいくつかの環に分類され、内側から、

D環 - C環 - B環 - A環 - F環 - ヤヌス/エピメテウス環 - G環 - パレネ環 - E環 - フェーベ環



となっています。ただし、F環より外側は非常に密度が薄い環で、地上から望遠鏡等で観測するのは困難です。よって、一般的な土星の環の図や写真は、ほとんどF環までしか描かれていません。

  土星の環の名前
  土星の環の名前 Wikipediaより引用

最も外側のフェーベ環は、2009年に発見された環で、環の直径が土星の直径の300倍という、他の環と全く別のスケールの環です。希薄なチリのようなもので構成されているため、可視光による観測は不可能。赤外線天文衛星スピッツァーによって初めて発見されました。

冒頭のカッシーニによる写真は、これらの環のうち、A環の写真になっています。A環の外側の方に「キーラーの空隙」と呼ばれる隙間があって、それがこの写真に描かれている隙間になります。

衛星ダフニスと羊飼い衛星

そしてこの写真の隙間部分に写っているのは「ダフニス」という土星の衛星です。地球の衛星はひとつしかありませんが、土星の衛星って何個あるかご存知ですか?

2017年1月現在発見されている土星の衛星は、62個です。スケールが違いますね。

そのうちのひとつがこの「ダフニス」になります。2005年にカッシーニの観測によって発見されました。直径は6~8kmという小さな衛星です。この衛星、環と環の隙間に存在しており、その重力は環の形の形成に大きく影響を与え、環の崩壊を防いでいるそうです。

環のある惑星にはしばしばこのような衛星が見られますが、これらを一般的に「羊飼い衛星」と呼ばれています。環の粒子を羊に例えてるんですね。なかなかのネーミングセンスですよね(笑)

土星には、羊飼い衛星が現段階で5つ発見されています。

・パン – A環のエンケの間隙に位置
・ダフニス – A環のキーラーの空隙に位置
・アトラス – A環外側に位置
・プロメテウス – F環内側に位置
・パンドラ – F環外側に位置



A環とF環がちょうどこの5つの衛星で仕切られているような感じですね。これらの重力によって、環の粒子が安定しているとすれば、もしこれらの衛星が無かった場合、どんな環になっていたんでしょうね。

  土星の環の構成(カッシーニの写真による) Wikipediaより引用
  土星の環の構成(カッシーニの写真による) Wikipediaより引用

探査機カッシーニの奇跡

とまあ、こんな感じで、冒頭の一枚の写真からいろんなスケールの妄想が出来るのですが、これもひとえに探査機カッシーニが様々な情報を地球に送り届けてくれてるおかげですね。

カッシーニは、土星探査専門に開発された探査機で1997年に打ち上げられました。金星・金星・地球・木星と4回のスイングバイを経て、2004年に土星に到着。そこから現在まで12年にわたって、観測を続けています。土星を206周回、その衛星に132回フライバイ。気の遠くなるような数字です。その成果は、以下の通り。

・科学データを514GB収集
・写真を33万2,000枚撮影
・土星の衛星を7つ発見
・ホイヘンスプローブをタイタンに着陸させた
・エンケラドゥスが氷のプルームを活発に吹き上げていることを発見
・タイタンが地球のように雨や川、湖、海を持つ世界であることを発見
・リングの垂直構造を明らかにする画像を初めて取得

などなど。(参考:Wikipedia

そんなカッシーニも、機械としての寿命がありますので、今年2017年の9月に運用を終了することが決まっています。最後は、土星の大気圏に突入させて燃え尽きさせる予定です。なんだか寂しい最期ですが、探査機に付着している微生物等による汚染を防ぐためなので仕方ないんですよね。

あと半年ちょっとですが、最後まで頑張って観測して欲しいですね。



  土星食の日にカッシーニによって撮影された土星の環の全景 Wikipediaより引用
  土星食の日にカッシーニによって撮影された土星の環の全景 Wikipediaより引用