サロマ湖はなぜ海とつながった? 砂州による閉塞と、住民による永久湖口の開削

 

  サロマ湖に沈む夕陽 栄浦から撮影(2008年)

  サロマ湖に沈む夕陽 栄浦から撮影(2008年)

今回はサロマ湖の話をしたいと思います。

オホーツク海沿岸の紋別市と網走市の真ん中ぐらいにある巨大な湖・サロマ湖。面積は約152k㎡で、北海道で最も大きな湖であり、日本全国で見ても、琵琶湖・霞ヶ浦に次いで3番目に大きな湖沼です。周囲長は87 km。残念ながら湖の一部が海とつながっているので、その周囲をクルマで一周することは出来ません。そうです、この湖は、一部が海とつながっているのです。ここが今回の話のキモです。

少し地理を勉強した方なら、この形状を見ればわかると思いますが、サロマ湖は典型的な潟湖(せきこ)またはラグーンと呼ばれる地形で、元は湾だった部分が、砂州の成長によって閉じられた湖なんですね。

一昨年に書いた記事でも紹介しましたが、単なるオホーツク海の一部だったサロマ湾が湖となったのは、今から千年ぐらい前だと言われています。サロマ湾だった時代から、この地域は豊富な海産物があったらしく、続縄文時代から周辺には集落が出来ていたことが分かっています。常呂町の栄浦周辺には、約2000の竪穴住居跡が残っているそうです。

砂州が成長して「湾」が「湖」になったとはいえ、完全に海と切り離されていたわけではなく、春になると東の端(鐺沸地域)に湖口が開いて、秋になると砂で閉塞するというのを繰り返していました。この湖口が開かないと、サロマ湖は雪解け水で溢れ、氾濫被害が出ることから、明治時代以降、毎年融雪期に住民達が人為的に湖口を開削していたらしいです。

この湖口が開かないことで困るのは、氾濫だけではありません。船を海に出せなくなるんですね。サロマ湖の東側の住民は季節限定とはいえ湖口が出来るので問題なかったのですが、西側に住んでいる住民は、船を外海に出すために延々と東の端まで行って戻ってくるしかなかったんです。小舟なら陸に揚げて、人力で砂州を横断することも出来るでしょうけど、幅が100m以上あるので、相当な苦労だったようです。

そこで登場したのが、

「そうだ、西側にも湖口を作ってしまえ!」

というとても乱暴な案です。

1920年代に入ると、東側住民が反対するなか、西側住民は西側の砂州の開削を始めました。ところが自然の摂理はそんなに甘くありません。掘っても掘っても自然に閉塞し、うまくいかない。やっぱりダメなのか・・・、そうあきらめかけたとき、奇跡が起こりました。

1929年、西側の住民が三里番屋付近に新たな湖口を掘り、4月16日に幅約7mの湖口を完成させたのですが、その日は大荒れの天気だったようで、湖の増水によって大量の湖水がその湖口から流れ出て、結果、湖口の幅がなんと100m以上に拡がってしまったのです。流れた水が何もかも削ってしまったんですね。そして、これが、今日まで閉じることのない永久湖口となりました。その後、勝手に拡がり続け、1932年には幅が460mにもなったようです。


  現在のその湖口。後に東側にも人口の湖口が作られたので、
  こちらは「第1湖口」と呼ばれている。
 

これだけ幅の広い湖口が出来ると、サロマ湖の水位は常に海面と同じになり、さらには、海水が多く流れ込んでくるため、淡水湖が汽水湖になってしまうという弊害が発生しました。その結果、湖の生態系が大きく狂い、それまで盛んだったカキの養殖が壊滅。しかしながら、代わりにホタテの養殖が始まり、現在の特産品となっておりますので、分からないものです。

ちなみに、西側のこの湖口が開いてから、東側がサッパリ開かなくなったらしく、当時の東側の住民は不満いっぱいだったでしょうね。そんなわけで、1973年に東側も開削工事を行い、幅50mの永久湖口が出来ています。ここは現在橋が架かっており、ストリートビューで橋の上からの眺めを見ることができます。(ストリートビューってすごいな・・・)

ここは、ワッカ原生花園の一部なので、徒歩でのみ行くことができます。駐車場から2kmぐらいあるので、少し根性が必要ですが、天気の良い日に原生花園の花を眺めながら歩くのも良さそうですね。
 

はい。これが、サロマ湖の湖口にまつわる歴史です。現在の2つの永久湖口には、いろんな人々の事情や思惑が絡んでいたんですね。幌岩山にあるサロマ湖展望台に行くと、この広いサロマ湖が一望できますので、そんな歴史を想いながら眺めてみるのも良いのではないでしょうか?

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